【留学生教育研究会 対面・WEBハイブリッドシンポジウム】日本語教育機関と高等教育機関との接続環境の変化と対応

▼ プログラム概要
| 名 称 |
留学生教育研究会 対面・WEBハイブリッドシンポジウム 「日本語教育機関と高等教育機関との接続環境の変化と対応」 |
| 日 時 | 2025年2月5日(水)13:00~16:30 |
| 形 式 | 会場&WEB併用ハイブリッド開催 |
| 会 場 | 主婦会館プラザエフ |
| 対 象 | 専門学校・大学・日本語教育機関・企業・関係団体関係者・一般 他 |
| 内 容 |
◆ 本会の映像の視聴
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| 主 催 | 一般社団法人外国人留学生高等教育協会(https://aheis.jp/) |
| 共 催 | 一般社団法人国際人流振興協会(https://ipesa.org/) |
| 後 援 |
独立行政法人日本学生支援機構(JASSO) 留学生教育学会 一般社団法人 日本私立大学連盟 日本私立大学協会 公益財団法人日本国際教育支援協会 全国専修学校各種学校総連合会 特定非営利活動法人 JAFSA(国際教育交流協議会) 公益社団法人東京都専修学校各種学校協会 公益社団法人日本介護福祉士養成施設協会 公益社団法人全国調理師養成施設協会 公益社団法人北海道私立専修学校各種学校連合会 一般社団法人全国専門学校情報教育協会 一般社団法人外国人材活躍推進協議会 日本行政書士会連合会 日本語学校協同組合 日本語教育情報プラットフォーム |
| 問合せ | 一般社団法人外国人留学生高等教育協会 事務局 〒151-0051 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-5-15-203 TEL: 03-6804-3889 FAX: 03-6455-5387 |
▼講演レポート
令和7年(2025年)2月5日、主婦会館プラザエフ(東京都千代田区)において、一般社団法人外国人留学生高等教育協会(以下「外留協」)主催、一般社団法人国際人流振興協会(IPESA)共催、独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)・留学生教育学会(JAISE)・全国専修学校各種学校総連合会を含む16機関の後援により、留学生教育研究会ウェビナー「日本語教育機関と高等教育機関との接続教育の変化と対応」が開催された。
本会は、会場とオンラインのハイブリッド形式で行われ、講演とパネルディスカッションを展開し、専門学校・大学・日本語学校関係者等が参加・聴講した。
講演1:専門学校・各種学校における教育の現状と展望
冒頭、米原泰裕氏(文部科学省総合教育政策局専修学校教育振興室室長)が「専門学校・各種学校における教育の現状と展望について」と題して講演した。
米原氏はそこで、「改正学校教育法」「高等教育機関進学率」「令和7年度予算案」「職業実践専門課程」を主題に取り上げ、各々の概要や現状を説明した。そのうえで近年の関心事として外国人留学生の動向を分析し、高等教育機関全体としては令和6年度の「激増」を契機に、再び増加トレンドに入ると予測。専門学校の留学生には他学校種と比べて中国の出身者が少ないことを目立った傾向として挙げた。また、ここ数年で留学生の国内就職率が急激に伸びていると指摘するとともに、日本人の労働人口が減少するなか、今後もさらに国内就職を後押しする必要があるとして、専門学校に対し「外国人留学生キャリア形成促進プログラム」の活用や日本語教育機関との連携、在籍管理のさらなる徹底を要望した。

専修学校教育振興室
室長 米原泰裕氏
講演2:日本語を学ぶ高校生の受入れ拡大も必要
次に、菊地勇次氏(文部科学省高等教育局参事官(国際担当)付留学生交流室室長補佐)が「留学生交流政策をめぐる最近の動向について」と題して講演した。
菊地氏はそこで、まず留学生交流の現状に関する各種データを解説。日本の外国人留学生総数は2023年5月時点でコロナ禍以降初めて増加し、徐々に回復傾向にある。また日本語教育機関の数は調査開始以来、過去最高を記録しており、菊地氏は「日本語教育の取り組みが様々な国に広まったことにより、留学生の出身国も多岐にわたっている」と述べた。続いて教育未来創造会議の第二次提言やGlobal×Innovation人材育成フォーラムなど、政府の高等教育国際関連施策を取り上げた。第二次提言(未来を創造する若者の留学促進イニシアティブ)では、2023年までに留学生40万人を目標としているが、達成に向けた重要なポイントとして「多様な文化的背景に基づいた価値観を学び、理解しあう環境の創出が大切」と指摘した。
高等教育局が政府の目標を受けて設置した会議体、Global×Innovation人材育成フォーラムでは高等教育の国際通用性を強化する観点から議論を進めている。そのうち外国人留学生の受け入れについて、菊地氏は重要な論点の1つとして「日本語を学ぶ高校生の受入れ拡大」に言及し、「後期中等教育段階からの受入れは専門学校や大学等の進学など定着につながる。すそ野を拡大する取り組みも必要」と述べた。

付留学生交流室
室長補佐 菊地勇次氏
講演3:日本語教育課程の概念整理が必要
次に、福田和樹氏(文部科学省総合政策局日本語教育課視学官)が「日本語教育の現状と展望」と題して講演した。
福田氏は令和6年4月に施行された日本語教育機関認定法(「日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機関の認定等に関する法」)の概要を説明するとともに、認定日本語教育機関の第1回の審査結果を振り返った。認定されたのは22機関と少なく、「カリキュラムの編成指針や日本語教育の参照枠に対する理解不足により、認定基準を満たしていないと判断されたものが多く見られた」と述べ、改めてカリキュラム編成における概念整理の必要性を指摘した。また、登録日本語教員の研修機関・養成機関について、複雑な制度設計を紐解きながら解説した。
終盤では在留外国人の増加に伴う日本語学習ニーズの高まりを背景に、日本語教育機関と高等教育機関との連携強化の必要性、留学と就労の接続性を課題に上げ、「今後はビジネスモデルも変わっていくのではないか」と展望。日本語を教える環境の充実に向け、教員の働き方改革やDXの必要性にも言及した。

福田和樹氏
シンポジウム:留学の出口までシームレスに接続する
最後に本会の統一テーマである「日本語教育機関と高等教育機関との接続環境の変化と対応」についてシンポジウムが行われた。
パネラーに福田和樹氏(文部科学省総合政策局日本語教育課視学官)・伊東祐郎氏(国際教養大学専門職大学院 日本語教育実践領域特任教授)・工藤昭子氏(国際武道大学別科 武道専修課程特任教授、留学生教育学会理事補佐)・森下明子氏(学校法人アジアの風副理事長、留学生教育学会理事)の4人を迎え、司会進行役を岡本比呂志氏(外留協副会長、留学生教育学会理事、学校法人中央情報学園理事長)が務めた。
岡本氏はまず前半の講演の講師を務めた福田氏以外の3人に、3講演の内容を踏まえた日本語教育の変化について感想を求めた。これを受け伊東氏が、留学生教育の現場からこれまでの日本語教育施策を総括。2019年の日本語教育推進法と今回の日本語教育機関認定法について、「単なる日本語教育に留まらず、多文化共生とグローバル化に向かうなかで日本社会が維持発展していくための法整備である」と評価した。そのうえで日本語教育機関認定法施行後の移行期間を「これまでの教育や組織のあり方を見直す絶好の機会」とし、「日本語教育の質の向上とともに、日本語教師という職業の社会的認知や地位向上を期待する」と述べた。工藤氏は「参照枠により日本語教育の共通の基準ができたことが画期的」、森下氏は「文部科学省の所管になり環境整備が進む」と期待した。福田氏はこうした感想を受け、教育課程編成の考え方や各英語資格の共通評価に向けた取り組みなど、認定に求められる要素を改めて教示した。
次に、日本語教育機関と高等教育機関の接続について意見交換し、森下氏が「両者が海外募集のルートを共有するとともに、日本語学校と高等教育機関が連携するブリッジプログラムや、高等教育機関と日本企業の産学連携・就職支援など、海外募集の段階から留学の出口まで見せていくことが非常に効果的と思う。また日本語学校と高等教育機関の入試の連携を考える時期にも来ている」などと提案した。工藤氏は「グループディスカッションやプレゼンテーションといった大学の学びを、両者が協力して日本語教育機関にも取り入れてほしい」と述べた。伊藤氏は「大学により正課生か別科生かなど留学生の受入れが異なる」として、学内における日本語教育担当教員と専門科目担当教員の一層の連携の必要性を指摘した。最後に感想を求められた福田氏は、「教育や入試がシームレスに接続するようになれば、日本語教育機関としてのビジネスモデルが問われるようになる。そうした変革の取り組みの点では地方の日本語教育機関がより厳しい状況にあると考えられるため、地方にもしっかりと目を向け、幅広い見地で支援していきたい」と述べた。

福田和樹氏

日本語教育実践領域特任教授
伊東祐郎氏

留学生教育学会理事補佐
工藤昭子氏

留学生教育学会理事
森下明子氏

岡本比呂志氏

閉会挨拶
本会の締め括りとして、岡田昭人氏(留学生教育学会副会長、東京外国語大学教授)が閉会挨拶を行った。岡田氏は本日の内容を総合的に高く評価したうえで、「特に接続の話が印象に残った。日本語教育機関と高等教育機関では学習内容や指導方法の違い、評価基準のギャップなど様々な課題があるが、これらを解決するためには両者が情報を共有し、実践を通して柔軟に対応することが必要。本日の発表や議論で得た示唆や知見を、それぞれの実践や研究に活かすとともに、よりよい接続環境の構築に向けて協力しあっていければ」と期待を寄せた。

岡田昭人氏
